そのユーザー理解、意味ありますか? —— 大規模レイオフに学ぶ次の時代のユーザー理解
- コラム

「UXは死んだ。」—— 2022年のアメリカで起こった大規模なレイオフ。約2万人のUX職種(UXデザイナー、UXリサーチャー等)が職を失ったとき、米国ではこのような言葉がまことしやかにささやかれました。
日本では、法律の面から簡単にはレイオフが起こりづらいものの、いくつかの点から、このままの状況では似た現象が起こるであろうことが想定されます。
本ポストを通して、現状のユーザーリサーチや顧客体験設計(UXデザイン)に対しての強烈な危機感が共有され、存在意義を問い直すきっかけになれば幸いです。
矮小化されたユーザー理解
主に大手事業会社やベンチャー・スタートアップなどでは、2020年ごろから「UXデザイナー」「UXリサーチャー」といったポジションを採用する企業が少しずつ増えてきました。
2010年ごろからバズワードになったUXが落ち着き、改めて現状に目を向けると「ユーザー理解」「顧客体験」といった「ユーザー起点で事業を伸ばすアプローチ」は、2つの着地を迎えているようです。

- 競争優位化 : 経営や事業戦略レイヤーから、顧客インサイトが活用され、当たり前のように意思決定の重要ファクターになっている
- 矮小化 : UXデザイナーやリサーチャーが社内にいるものの、関わる意思決定が下流のものばかりで影響力が非常に限定的
そして、実態はおそらく以下のような割合になっているでしょう。

ほとんどの企業が、顧客理解やユーザー体験の重要性を認識している一方で、実態は「下流の意思決定にしかユーザーの声は反映されず、単なるリスクヘッジとしての存在」になっている状況が多いのではないでしょうか?
企業目線で決められた戦略をもとに、企業目線で落とし込まれた仮説、リリース前になって、間に合わせのユーザビリティテストやヒアリング。そもそも筋の悪い(= 大きなユーザー価値につながらない)選択肢AとBのどちらかを選んでリリースをする。そして不幸なことに、戦略や仮説を決める場には、UXデザイナーやリサーチャーの姿はない...。
そのような、事業成果に対して「矮小化されたユーザー理解」(本来のポテンシャルを十分に活かせず、間に合わせの判断材料にしかなっていない状況)が、今のユーザー理解・UXデザインの現在地だと考えられます。
ユーザー理解の効率化に未来はない
そのような「矮小化されたユーザー理解」では、大きな成果(ユーザー価値・事業成果)は見込めません。
大きな成果が見込めないと、予算や組織からの信用は減り、さらにユーザー理解が寄与できる意思決定が減っていき、影響範囲が狭くなります。

そのような負のサイクルの中で、「たくさんユーザーインタビューをやって、他の人が見にきやすいように...」など、浸透施策に走っても、状況は決して良くなりません。成果や実績のないものをいくらアクセスしやすくしても、関心は一時的な盛り上がりに終始します。

組織において、ユーザー理解やUXデザインが市民権を得られない問題の根本原因は、浸透ではなく成果の不在に他なりません。

「組織が理解してくれないから」と周囲の人や環境のせいにしたり、「まずは私や活動を知ってもらおう」など社内政治に走るのは、傷口に蓋をしてお化粧をしているようなものです。
重要なことは、「どうすれば事業成果につながるか?」といった、ユーザー価値と成果を結びつけること、そしてその結びつきをつくる活動から逃げないことです。

安易に「インタビューって大変だから効率化しよう」といった目先の効率化を追っても、待っているのは肩身の狭い未来しかなく、負のサイクルからは抜け出せません。
大規模レイオフで「UXが死んだ」と呼ばれる背景も、まさにこの「効果ではなく効率を追ってしまった」ことであると考えられます。今のユーザー理解に最も求められていることは、間違いなく効率ではなく効果だと言えるでしょう。
UX職種の事業コミットのなさが、ユーザー理解をキレイゴトにする
効率と生産性は、似て非なる考え方です。生産性が「少ない時間で大きな成果を出す」ことを意味するのに対し、効率化は「(単に)かかるコストを少なくすること」を指します。
ユーザー理解やUXデザインにおいて、なぜ効率化を追い求めるべきでないかは、効率と効果(成果)のマトリクスを使うと分かりやすいでしょう。

効果・成果を出せていて、かつ効率も良い、右上の「Aゾーン」の状態が最も生産性が高い状態だと言えます。
一方で最初からAゾーンに取り組める組織はめったにないでしょう。ほとんど全ての組織が左下のCゾーンからスタートするとして、右上に向かうルートには2種類考えられます。
- 効率を高めてから効果を高める(C→B→A)
- 効果を高めてから効率を高める(C→D→A)
そして、先ほどの「負のサイクル」を踏まえると、1のアプローチが現実的でないことは明らかです。

具体的にイメージすればさらに明らかでしょう。事業の下流にあたる小さな意思決定に入る状態をいくつも回せる状態をつくったところで、事業計画や戦略が間違っていたら、費やした時間や人手はムダなものになります。
つまり、効果を高めてから効率化しないと、永遠に「矮小化されたユーザー理解」から抜け出せないのです。

効果を高めることは、すなわち事業を伸ばすことであり、顧客価値を事業KPIとして表出させることに他なりません。
「事業成果って言われても、よくわからないし...」と、ユーザー価値と事業成果の結びつきから逃げていては、組織においてユーザー理解とは「その程度のもの」であり、業績が下がったら真っ先に切られるものにしかなりません。
現場でユーザー理解を進める方々にとって、事業への高いコミットメントこそ、ユーザー理解やUXデザインをキレイゴトにしないための最も持つべき生面線と言えるでしょう。
全身全霊をかけて"効果"に投資せよ
改めて、ユーザー理解やUXデザインが本来のポテンシャルを発揮している状態とは、「ユーザー起点・顧客インサイト起点の意思決定は、優れた事業を生む」と社内が確信している状態です。
確信しているとは、単に個々がポエムのように想っているだけでなく、意思決定のフローに必須で組み込まれ、多くのヒトとカネが投資されていることです。
先の効果と効率のマトリクスで示したように、この状態に辿り着くためには、効果→効率の順番で取り組む他ありません。

ユーザー理解をキレイゴトにせず、あなたのチーム・組織の強みにするためには、全身全霊をかけて「効果」(成果)へ投資することです。
効果へ投資し、ユーザー理解と事業成果の間に、強力なつながりをいくつもつくることです。

単なるユーザーインタビュー屋さんや、「チョット顧客に詳しい人」を演じて、組織のサポート役として振る舞うのではなく、誰よりも先頭に立ち「こういう事業の伸ばし方もあるよ」と、既存の伸ばし方に加えて「ユーザーインサイト起点の事業成長」というアプローチを確立させましょう。
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