なぜインサイトマネジメントは、私の魂を震えさせるのか
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インサイトマネジメント
哲学・考え方

創業するタイミングや、新しい事業をはじめるタイミングで、いつも自問することがある。
その事業に10年間、情熱をかけられるか?
市場の大きさや顧客の課題、自社の強みなど、もちろん重要だ。
でも、新しい何かを生み出すことは、とにかく大変にストレスフルだ。日々否定されるだろうし、いくつもの検証が必要だし、決まった仕事なんてものもない(実際にスタートアップのファウンダーが精神の疾患になる割合は、一般社会人の7倍もあるそうだ...わかる...)。
そんな不確実さ(とそこからくるストレスとプレッシャー)を受け入れて「それでもやりたい、やっていこう」と思えるには、並々ならない情熱が必要だ。
その情熱が十分かを問うための質問が、先の質問である(ちなみに、元ネタはビジョナル創業者の南さんの『ともに戦える「仲間」のつくり方』だったと記憶している)。
そして、「インサイトマネジメント」という領域は、まさに10年以上にわたって情熱をかけられる、とてつもない希望のある分野なのだ。
ここから先は、あくまで私の個人的な「インサイトマネジメント」という領域へのポエムである。
2010年ごろから「UXデザイン」「UI/UXデザイナー」など、「UX」(あるいはCX)などのワードが台頭してきた。
あえて砕いた表現をするなら「技術起点や市場起点でなく、ユーザーや生活者を起点にものごとを考えようね、進めようね」という考え方だ。
インターネットが誕生し、ものづくりがデジタルの世界でも行われ、有象無象のアプリやサービスが増えてきた流れの中、ひとつの競争優位(選ばれる理由)としてユーザビリティやユーザー体験が重要視されるようになってきた。
これを「UX第1ラウンド」(これまでの市場や技術起点のものづくりに対しての、新しい事業拡大のアプローチとして)としたい。
しかし、この第1ラウンドは2022年のアメリカでのレイオフに代表されるように「負け」に終わったと考えている。
参考 : そのユーザー理解、意味ありますか?
アメリカだけではない。この敗北は、身近にもたくさん見てきた。
「UX〇〇」というポジションはあるが、信用も予算も権限もないUX職種
意思決定の末端に追いやられてしまったユーザーリサーチ活動
あいまいな期待でつくられ、解体されていくリサーチ組織
これまでCentouを通じて、かれこれ200社以上はお話してきたが、「(ユーザー理解的なことを)大事と思ってない人はいないが、ビジネスの判断の優先度ランキングがあるとしたら、上位に食い込んでいない(から予算も裁量も乏しい)」というニュアンスだ。
この現状に物申したい方もきっといらっしゃるだろう。UX職種自身の振る舞いや、採用側の期待のあいまいさなど、要因はさまざまだが、少なくとも悔しい思いをした方は何人もいるはずだ。
しかし、今まさにインサイトマネジメントによって、第2ラウンドが勃興しようとしている。
本来、お客さまやユーザー、生活者から見たら、サービス(やブランド)は1つのものとして認識される。
あるキャラクターが好きな人からしたら、グッズを買う時も、アニメを見る時も「その作品」として楽しんでいるように、
あるいは、デジタルプロダクトなら画面上の操作も、サポート担当者のやり取りも「そのサービスにまつわること」としてユーザーは認識する。
しかし、組織では職種や部門という「区切り」がいたるところにある。越境なんていう言葉もあるぐらい、放っておくと「区切り」ができてしまう。
区切ることで再現性が高まる側面もある。だから、区切りが悪いわけではないが、区切りがあることによって、本来1つであるはずのサービス体験やブランドは、自然には考えがおよびづらい構造になる。
ここにUX第1ラウンドの敗因がある。
「ヒト (ユーザー/生活者/顧客) を起点にものごとを考える」ことは、根本的に区切りをつくらない発想だからだ。
学際的(interdisciplinary)という言葉があるが、ヒト起点でものごとを考えることは、まさに学際的であり部門をまたぐことで価値が出る活動である。
だから、とってつけたようにユーザーリサーチャーという職種を置いても、(多くの区切りがあたりまえの組織においては)当然機能しない。見せかけのジャーニーマップや、インタビューTipsを社内に流しても、「なんかよさそう〜」の温かい声とともに、たくさんの「区切り」に阻まれ消えていくだけなのだ。
しかし、インサイトマネジメントは、この「区切りとの折り合い」をうまくつけられる可能性がある。
これが、私の魂を震わせる理由の一つだ。
カスタマージャーニーやペルソナなど、「デザイン思考」や「UXデザイン」の文脈で、さまざまな道具はいくつもある。
しかし、依然として「ユーザー理解と事業成長の"間"」は、科学されていない領域であり、多くの論点がある。
プロジェクトやチームごとに使い捨てにされていく、本当に正しいか怪しいジャーニーマップやペルソナ
繰り返される、プロジェクトごとの数人へのインタビューと局所最適な結論(そして、サービスの根本の価値を問われると「いろいろある」から抜け出せない)
「うちは顧客理解を大事にしてます!」と発信しながら、短期のビジネス論理に勝てず「うちは文化が弱くて...」とつい愚痴をこぼしてしまうUX職種(本当は文化の問題ではなく成果の問題)
つまり、顧客理解の組織実装には、ペルソナやジャーニーマップをはじめとした道具(フレームワーク)では足りない何かが必要であるということだ。
インサイトマネジメントは、このような論点に「顧客インサイトを組織で共有できる形で管理する」仕組みをつくることで答えを出す考え方だ。
こうすることで「わからないからユーザーインタビューしよう」という後手の顧客理解(re-active)ではなく、「知りたい時にはすでに他の誰かが貯めたインサイトのデータがある」(pro-active)になるのだ。

pmconf2025で満席立ち見も出た『"主観で終わらせない"定性データ活用 ― プロダクトディスカバリーを加速させるインサイトマネジメント』より抜粋
Figmaのユーザーは60%がノンデザイナーだそうだが、職種や役割関係なくあらゆる人が「顧客インサイト」という関心ごとを起点にコラボレーションできる基盤が必要なのだ。
Centou(Center of Userの略)の利用者は、デザイナー・リサーチャーから、起業家、データアナリスト、温泉旅館の店舗スタッフ、お寿司やの店長まで非常に多岐にわたるが、まさにこの「インサイトのコラボレーション」(顧客理解の組織実装)を実現しようと日々奮闘している。
インサイトマネジメントに取り組むことは、もちろん事業の成長に寄与する。しかし、私の魂を震わせているのは、それだけではない。
インサイトマネジメントをしている企業を何社も見ていて(あるいは自社でも実践していて)、気づいたことがある。
それは、インサイトマネジメントに取り組むチームが楽しそうに働いているという点だ。
考えてみたら納得である。インサイトマネジメントに取り組むチームは、彼らの顧客からの喜びの声を日々もらっている。
感謝され、意義のあるプロダクトをつくっている実感を毎日得られる職場。それは楽しくないはずがない。

※ Centouのサービス概要資料から抜粋。実際に、組織エンゲージメントについてのある調査によると、「納得感のない説明」による心理的安全性は30%低下するそうだ。
体感としても、「このリリース / 施策は、誰が嬉しいんだ...」とうっすら思いながら、スケジュールに追われる仕事の仕方は、長くは続かないのではないだろうか。
インサイトマネジメントは、「どうせつくるなら / 仕事をするなら、喜んでほしいな」という心が報われるための考え方だと思っている。
私が個人的にインサイトマネジメントの領域にかける情熱を書き殴ってみた。
UX第2ラウンドなんて言ってみたが、インサイトマネジメントという概念は、根本的には「ヒトを起点に事業を伸ばす」というアプローチが、事業活動の当たり前になっていくための試行錯誤の歴史だ。
インサイトマネジメントは単なる道具・フレームワークではなく、新しい事業の伸ばし方であり、「顧客を想って仕事をする人」が報われるための考え方である。
そう考えると、ある種「思いやりの戦い」だとも言える。
「顧客満足 vs 売り上げ」ではなく、「顧客満足→売り上げ」になる世界線、上司や経営に言われたからやるのではなく、価値になるからやると決める世界線。そんな世界にインサイトマネジメントは連れていってくれる。すっかりこの概念の虜である。『鬼滅の刃』風に締めるならこうである。
「お前も鬼にならないか?」(意訳:あなたも一緒にインサイトマネジメントの世界に足を踏み入れませんか)
あなたのチームも、
インサイトマネジメントを
はじめませんか?
インサイトマネジメントは、ユーザー理解から事業を伸ばしたいあなたの味方です。
「顧客の声は聞いているのに成果が出ない」「チームの認識がズレる、スピードが遅い」
そんなお悩みから解放され、顧客に向き合うほど事業が伸びるしくみを実現しましょう。

Author

Kenji Kato
年間400名以上のユーザーインタビューを実践、5回の事業立ち上げ、顧客インサイトを活用し年間売上9倍の成長などを経て、現在はインサイトマネジメントシステム「Centou」のプロダクト責任者をしています。「あらゆる企業やチームがインサイト駆動で成長できる未来をつくる」をモットーに、さまざまな組織のインサイトマネジメントを支援しています。
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