ユーザーインタビューからインサイトへ落とし込む実践的なプロセス

7min

  • ユーザーインタビュー

  • インサイト

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サービス開発においてユーザーニーズ(ペイン)の検証や、ユーザー像の理解は必須です。ユーザーインタビューやユーザーヒアリングは、そんな「問題の特定」「ユーザー像の理解」に適した手法です。

一方で、「ユーザーインタビューで何を聞けばいいのか?」「実施しっぱなしになっている...」といった状況は非常によく起こります。

このドキュメントでは、

  • ユーザーインタビューが力を発揮しやすいフェーズ / 場面

  • ユーザーインタビューの具体例

  • ユーザーインタビューからインサイトを抽出する具体的な流れ

をご紹介します。日々のプロダクト開発や事業開発にぜひお役立てください。

ユーザーインタビューが最適なフェーズや場面

事業のフェーズと目の前の施策やプロジェクトの状況によって、下図のように、ユーザーインタビューの効果は変わってきます。

横軸に事業フェーズ、縦軸にプロジェクトの状況が記載され、それぞれの場面ごとにユーザーインタビューの効果について記載されている表。縦軸には、それぞれ「1. 課題の発見」「2. 課題の絞り込み」「3. 解決策の探索」「4. 解決策の提供」と記載されている。横軸には、「立ち上げフェーズ」「スケールフェーズ」「市場浸透フェーズ」と記載されている。課題発見の行では、ユーザーインタビューはどのフェーズでも最適なアプローチであり、課題の絞り込みの場面では、市場浸透フェーズ以外は最適、市場浸透フェーズでは他選択肢も併せて検討と記載されている。解決策の探索の場面では、立ち上げフェーズのみ良いアプローチとあり、それ以外は他選択肢を検討と記載されている。最後の解決策の提供の場面では、立ち上げフェーズのみ他選択肢を検討と記載してあり、それ以外は他の選択肢の方が優位と記載されている。

ユーザーインタビューは、行動の理由や対象の方が抱えている課題など、深い情報を得られることが強みなため、課題発見やユーザー像の理解を行う場面で非常に強力な武器になります。

一方で、解決策を提供する場面では、(有名なフォードの話のように)馬に乗っていた時代に「車が欲しいか?」と聞いても効果がないように、他のアプローチを検討すべきだと言えます。

ここからはさらに詳細に、横軸の事業フェーズについて、縦軸の施策やプロジェクトの状況について、それぞれ詳しく見ていきます。

事業フェーズによってユーザーインタビューの効果は違う

まずは、事業フェーズ別に見るユーザーインタビューの効果についてです。

事業のフェーズは、プロダクトライフサイクル(PLC)やキャズム理論、イノベーター理論などを統合し、分かりやすく3つのフェーズに分けて考えると良いでしょう。

  1. 立ち上げフェーズ ...
    新規事業立ち上げ時や創業時など。プロダクトのコンセプト検証や、イノベーター層やアーリーアダプター層の獲得などがテーマのフェーズ。
    🔑 キーワード:PSF、PMF、0→1、1→10

  2. スケールフェーズ ...
    プロダクトが正式にリリースされ、売上の拡大や、組織の拡大などが行われるフェーズ。
    🔑 キーワード:10→100、キャズム、ユニットエコノミクス

  3. 市場浸透フェーズ ...
    アーリーマジョリティからレイトマジョリティの獲得など、市場のメインストリームにプロダクトを受け入れてもらう段階。68%ものユーザーや顧客がこのフェーズだと言われています。
    🔑 キーワード:100→1000、アーリーマジョリティ、レイトマジョリティ、流行づくり、多角化、多様化

どのフェーズでもユーザーインタビューは効果的ですが、フェーズごとにプロダクトの成熟度などが違うため、期待できる効果がフェーズによって異なります。

  1. 立ち上げフェーズ ... ユーザーニーズの特定、コンセプトの検証、ペルソナの検証

  2. スケールフェーズ ... プロダクトの利用シーンの特定、利用用途の把握、利用していないユーザーセグメントの把握、プロダクト利用中の課題特定

  3. 市場浸透フェーズ ... 多様なユーザー像の整理、セグメント別の利用用途の把握

また、事業が拡大しさまざまなターゲットに対してプロダクトを提供するにつれ、ユーザーインタビューだけでは、適切な判断をしづらくなります。アンケートやA/Bテスト、行動分析など複数のアプローチを組み合わせて判断・意思決定を行いましょう。

課題発見や課題定義の段階で特に効果的

次に、より具体的な、各施策やプロジェクトの状況によるユーザーインタビューの効果の違いについて。

施策やプロジェクトの状況整理には、ダブルダイヤモンドという課題解決のためのフレームワークが有効です。

ダブルダイヤモンドについて解説している図。ダイヤモンドを模した菱形の図形が中央に2つ配置されており、それぞれの菱形を縦に等分し、合計4つの三角形が表示されている。それぞれ左から「1. 課題の発見」「2. 課題の絞り込み」「3. 解決策の探索」「4. 解決策の提供」と記載されている。

プロダクト開発やマーケティングなど、皆さんの普段の業務に合わせて、各段階を読み替えていただけるとイメージがつきやすいかもしれません。

ユーザーインタビューは特に前半のダイヤモンド部分、つまり課題発見や課題特定に役立ちます。

  • 施策のターゲット像について理解を深めたい

  • 新機能を利用するユーザー像やシーンについて解像度を高めたい

  • サービスの利用者が多様化してきたので、現状を整理したい

などの場面で活用すると良いでしょう。


ユーザーインタビューはさまざまな場面で役立つ一方、自社のフェーズやプロジェクトの状況を踏まえて活用することが重要です。「ユーザーインタビューをするべきか?」と迷った時は、以下の表を早見表としてご活用ください。

横軸に事業フェーズ、縦軸にプロジェクトの状況が記載され、それぞれの場面ごとにユーザーインタビューの効果について記載されている表。縦軸には、それぞれ「1. 課題の発見」「2. 課題の絞り込み」「3. 解決策の探索」「4. 解決策の提供」と記載されている。横軸には、「立ち上げフェーズ」「スケールフェーズ」「市場浸透フェーズ」と記載されている。課題発見の行では、ユーザーインタビューはどのフェーズでも最適なアプローチであり、課題の絞り込みの場面では、市場浸透フェーズ以外は最適、市場浸透フェーズでは他選択肢も併せて検討と記載されている。解決策の探索の場面では、立ち上げフェーズのみ良いアプローチとあり、それ以外は他選択肢を検討と記載されている。最後の解決策の提供の場面では、立ち上げフェーズのみ他選択肢を検討と記載してあり、それ以外は他の選択肢の方が優位と記載されている。

ユーザーインタビューからインサイトへ

では、次に具体的なユーザーインタビューの例をもとに、インサイト抽出までの一連の流れをご紹介します。

ユーザーインタビュー例

題材として、多くの方に馴染みのあるオンライン会議ツールを例にユーザーインタビューを実施してみます。

  • インタビュー者:田中さん(リサーチャー)

  • インタビュー対象:森本さん(ユーザー・生活者)

  • インタビューの目的:オンライン会議ツールを開発するために、オンライン会議の場面で求められることを把握する

このような条件でインタビューを行った時、以下のような調査データを得ることができます。


田中 (リサーチャー) : 本日はお忙しい中、時間を割いていただきありがとうございます。普段、オンライン会議は1日にどれぐらいありますか?

森本さん (ユーザー) : はい。私は企画の部門で働いているため、1日にいろんな人と会議をします。ほとんどがオンラインで行われています。

田中 (リサーチャー) : 複数の会議があるんですね。会議のテーマは、どんなものが多いのでしょうか?

(つづく...)


もちろん、細かな聞き方の工夫やラポール形成など、ユーザーインタビューのための良い方法論はたくさんありますが、それらをあえて省いてシンプルにしたのが上記のようなデータになります。

次に、ここからファクトを抽出してみます。

ファクトを抽出する

上記のようなインタビューの議事録だけをそのまま渡されても、情報をキャッチアップしづらく、またアクションにつながりにくいでしょう。

リサーチの要約なども1つの方法ですが、よりさまざまな活用方法を考えると「インサイト」という単位に落とし込むのが多くのチームにとっては最適でしょう。

そして、インサイトに落とし込むためには、まずはファクト(事実)を抜き出します。

抜き出すべきファクトの例

では、先ほどのインタビューから具体的にインサイトを抽出してみましょう。
まずは、リサーチの目的やプロダクトに対してヒントになりそうな箇所を見つけます。


森本さん (ユーザー) :  はい。私は企画の部門で働いているため、1日にいろんな人と会議をします。ほとんどがオンラインで行われています。


そして、事業やリサーチの目的に関わるファクトを抜き出します。


1日にいろんな人と会議をします。ほとんどがオンラインで行われています。


どうやら、今回インタビューした森本さんは、1日に複数のオンライン会議をするようです。
そこで、以下のようにファクトを抽出します。


  • 1日に複数のオンライン会議を行なっている


ファクト抽出のポイントは、その場にいない人にも伝わるように抜き出すことです。長い議事録から、適切に文脈を切り取るようなイメージをしましょう。

インサイトにまとめる

さらに、複数のファクトを出していくと、共通点を見つけ出すことができます。例えば、先ほどのファクトと似たものを、いくつか出してみましょう。

  • 1日に複数のオンライン会議がある

  • 会議は連続する場合が多い

  • さまざまな部署や企業との会議

  • これまで面識がない人ともよく話す

  • 出社時は、オフィスでよく立ち話

ここから言えるのは「すぐに会議を開始してスムーズに切り替えたい」ということでしょう。

このようなインサイトを満たして爆発的に普及したのがZoomです。Zoomでは、任意のURLをクリックするだけで起動し、ミーティング相手のアカウント発行を不要にする等によって、会議の開始を非常に簡単なものにしました。

こうして、インタビューの数やそこから出たファクトが増えていくと、より強固なインサイトを抽出することができます。

インサイトは、まるで「リサーチ情報を使いやすく抽象化した、コンポーネントのような存在」であり、多面的なリサーチ情報を多面的なまま解釈しやすくします。

インサイトという単位に落とし込めば、さまざまな職種が自分たちの業務に役立つようにリサーチを活用することができます

プロダクト開発やUXデザイン、事業開発へ接続する

高度なインサイトが出たら、勘の良い方は「こんな施策をすると良いかも?」といったことを思いつくかもしれません。

先ほどの「友人・知人経由で流入する」というインサイトを例にすると、

  • 友人からの紹介キャンペーンなどをするとユーザー獲得がやりやすいかも?

  • 新規登録時に招待コードを発行するような機能を実装すると良いかも?

  • この流入経路に比べて、他の流入経路はどうなのか?

といった議論が非常に行いやすくなります。つまり、良いインサイトはチームの認識を揃え、議論をしやすくする効果もあるのです。

インサイトを元に、

  1. 改めてユーザーの現状を整理する(ex: ペルソナ)

  2. ユーザーの行動の流れを明らかにする(ex: ジャーニーマップ)

  3. 特定の施策に活用する

など、状況に応じたアクションを行ってみてください。

さいごに:インサイトはチームと事業を動かす原動力である

プロダクト改善やマーケティング活動など、さまざまな業務において「この機能は誰がどう使うのだろう?」といった疑問を持ったことのある方は少なくないと思います。

不透明なユーザー像やユーザー理解の違いが、コミュニケーションのすれ違いを生み、開発の手戻りにつながる、といったことも珍しくありません。

インサイトという、ユーザーと事業をつなぐパーツ(コンポーネント)があれば、チームの認識はもっと揃い、関わるメンバーも気持ちよく働けるでしょう。そして言うまでもなく、ユーザー理解がないままに施策を乱発するよりも、成功確率が大きくなるでしょう。

良いインサイトは、チームを良い方向へ動かし、事業を進める原動力になります。インサイトマネジメントツールのCentouでは、リサーチからインサイト抽出、活用までを効率的に、効果的に行うことができます。ぜひ以下のお問い合わせ、お申し込みフォームからご連絡ください。

※ より分かりやすくするために、ユーザーインタビュー例を差し替えました(2024.6)

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Author

Kenji Kato

年間400名以上のユーザーインタビューを実践、5回の事業立ち上げ、顧客インサイトを活用し年間売上9倍の成長などを経て、現在はインサイトマネジメントシステム「Centou」のプロダクト責任者をしています。「あらゆる企業やチームがインサイト駆動で成長できる未来をつくる」をモットーに、さまざまな組織のインサイトマネジメントを支援しています。

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