プロダクト成長のための、ユーザーインタビューの分析方法
10min
ユーザーインタビュー
分析プロセス

プロダクト開発やマーケティング、新規事業立ち上げ、さまざまなシーンで行われるユーザーインタビュー。
ユーザーインタビューをうまく活用することができれば、市場調査やアンケートでは分からなかった、具体的なユーザー行動や課題をつかむことができます。
一方で、ユーザーインタビューを実施したまま、メモや議事録だけを残していても、十分な学びは得られません。
本ドキュメントでは、ユーザーインタビューを120%活用するための、シンプルで強力な分析プロセスをご紹介します。
まずは、分析を行う必要性について考えてみましょう。
ユーザーインタビュー後に何もしない場合と比べて、分析をおこなえば当然時間はかかります。多くの方にとって、ユーザーインタビュー以外にも役割や仕事があるでしょう。
では、時間をかけて、分析をおこなうことは本当に必要なのでしょうか?
分析の必要性は、大きく3つに分けられます。

参照しやすさ ... ユーザーインタビューに参加した人もそうでない人も、振り返りやすくなる
アクションしやすさ ... ユーザーインタビューを行った後「それで?どうする?」とならずに、確実に次の動きにつなげられるようになる
認識の揃えやすさ ... 「私は、あの人はニーズがあると思う」「いや、僕はないと思う」などのすれ違いを生まずに、共通認識をつくることができる
ユーザーインタビューを行った後、企画やPJ進行など、さまざまなの場面で「そういえば、この機能 / PJに関連するデータなかったっけ?」と探すことがあるかもしれません。
そのような場面で、もし分析を行わず議事録や録画データのままであれば、チームメンバーがいざ見返そうと思った時に、腰が重くなります(= 認知負荷が高い状態)。そして、残念なことに、(見てと伝えたはずが)ほとんど見られないことも珍しくないでしょう。

いくらやる気がありユーザー熱心なメンバーも、常に長い議事録の全てや、フルの録画を見られるわけではありません。
参照しやすい状態にするには、議事録や録画から、さらに情報を整理する = 分析する必要があります。
ユーザーインタビューは、実施して終わりではなく、その後のアクションにつながってこそ意味があります。リサーチは、必ずアクションとセットであり、二つはグルグルと循環する、連続的なサイクルです。

分析は、このアクションとリサーチのサイクルを回すための潤滑油のような存在です。分析をしないままにすると、人によって得られる気づきの量や質が異なり、効果的なアクションにつながらないでしょう。
3つ目に、分析をきちんと行えば、チームで認識をそろえやすくなります。
「あの人はニーズがあると思う」「いや、僕はないと思う」「Aさんは欲しいと言っていた」「いやBさんは別にそうでもなかった」といった解釈のズレは、ユーザー価値に熱心なチームであるほど起きやすいものです。

そして、どうしても職種や役割に合わせてバイアスがかかってしまうこともあります。例えば、プロダクトチームなら、プロダクトの機能と結び付けて課題やアイデアを考えやすいといった具合です。
チームで共通の認識を持つためには、解釈がブレないような対処 = 分析が必要なのです。
ここまでで、分析は3つの視点(参照しやすさ・アクションしやすさ・認識の揃えやすさ)から必要であることが分かりました。
では、具体的に、どのように分析を進めるべきなのでしょうか?
ユーザーインタビューなど定性的なデータの分析は、以下のようなプロセスで行うことで、参照しやすく、アクションしやすい、認識が揃うアウトプットになります。

ローデータに起こす
ファクトを抜き出す
インサイトにまとめる
用途に合わせて再編集する
それぞれのプロセスについて、詳しく見ていきましょう。
まずは、ユーザーインタビューやヒアリング後は、なるべく発言をそのまま書き起こしましょう。現場観察などを行う場合は、写真や動画もセットにすると状況がより伝わりやすいでしょう。

録画や録音がある場合は、NottaやRimo Voiceなどの文字起こしサービスを利用することで、ローデータを書き起こす作業は大幅に効率化することができます。
ローデータの準備ができたら、次にファクトを抜き出していきましょう。抜き出したファクトは、ファインディングス(Findings)などとも呼ばれます。

ファクトの抜き出し方には、いくつかのポイントがあります。
あくまで事実であること : いきなり飛躍して「ニーズあり」などと抜き出さない
対応関係が明確であること : ローデータのどこの部分が、どのファクトなのかを明確に
文章であること : 「購入」など、単語でまとめない(のちのち参照しづらくなる)
具体的であること : いきなり抽象化しすぎない。固有名詞などがある場合はなるべく入れる
例えば、あなたがZoomのようなオンライン会議ツールについて、ユーザーインタビューを行っているとしたら、以下のようなファクトを抜き出せるかもしれません。

1日に複数のオンライン会議の予定がある
会議との間の時間はなく、連続して予定を入れている
時間いっぱいまでミーティングが続く
ローデータからファクトを抜き出すステップは「脱文脈化」とも言われます。
いくつもの文脈の塊(ローデータ)を、分かりやすい単位(ファクト)に切り分けていく作業だからです。
伝わりやすく正確なファクトを出すコツは、「この発言はつまり...」と心の中で唱え、分かりやすく言い換えるように表現することです。
また、Centouの「マーキング機能」(特許出願済み)を使うことで、ファクトと該当部分のローデータをセットで簡単に抜き出し、大幅に時間短縮することができます。
ファクトを抜き出した後は、複数のファクトを統合してインサイトに昇華させていきます。
インサイトは、ユーザーインサイト / コンシューマーインサイトなどとも呼ばれ、IMA(国際的なインサイトマネジメント学会)では、以下のように定義されています。
消費者の価値、行動、習慣、状況、態度、市場、環境に関するコンテクスト(背景・文脈)に沿った観察結果であり、組織がどのように行動し成功を収めるかを変える可能性があるものである。
参考 : https://www.jmra-net.or.jp/activities/trend/transform/20220719.html
やや難解なため、語弊を恐れずあえて単純化すると「ある場面でユーザーがやりたいこと」と言えます。

やりたいこと(欲求)だけでなく、考えていること(思考・価値観)、やっていること(行動・習慣)もインサイトに含まれますが、初めのうちは「場面ごとの欲求」と理解すれば十分でしょう。
つまり、場面が違えばインサイトも違い、対象ユーザーが違えば別のインサイトが出てくるということです。ちなみに、このような背景から、インサイトマネジメントの重要性はさらに高まっています。インサイトマネジメントについてはこちらのドキュメントをご覧ください。
そして、インサイトをまとめるにあたって意識すべきことは、以下の3つです。

明瞭さ (Clality) ... 情景が想像できるような言語化であること
関連性 (Traceability) ... ローデータ / ファクト / インサイトの関連性が分かりやすく、必要に応じて修正可能であること
行動可能 (Actionable) ... 次の行動に繋げやすく、その行動が組織や事業に良い変化をもたらすこと
特に3つ目は非常に重要で、リサーチを単なるインプット(情報収集)で終わらせず、事業のための資産にするためには、明確に「インサイト」としてまとめられる必要があります。
IMAでも、以下のように記載されています。
インサイツは実行可能でなければならず、その行動が組織の成功に貢献しなければならないということに先進的なインサイト部門のリーダーは皆、同意している。十中八九、その成功は、「$」や「£」のような通貨記号で定量化することが可能であり、実際それは必須である。第一に、価値あるインサイツを生み出したことを自分たちに証明するため、第二に、意思決定者に私たちの提言による利益を実証するためである。
そして、ファクトからインサイトにまとめるには、具体的に以下のようなステップを踏みます。

同じ欲求でまとめられそうな、いくつかのファクトを集める
集めたファクトをグルーピングする
必要に応じてさらにグルーピング
このようにして抽象化していくことで、事実から真実へ、表層から本質へとまとめ上げていきます。
先ほどの、オンライン会議シーンでのファクトを例に考えると、以下のようなインサイトが得られるかもしれません。

素早く別の会議に切り替えたい
実際に、このインサイトを満たして爆発的に成長したのが、URLをクリックするだけで特定のミーティングが立ち上がるオンライン会議ツールの「Zoom」です。
Centouが提供する「分析モード」を使うことで、ファクトからインサイトへのプロセスを、非常に高速で、かつ簡単に行うことが可能です。
インサイトにまとめた時点で、「どの場面で」「どんなユーザーが」「何をしたいか」について、かなり明確に整理ができました。
また、過去のリサーチを蓄積していれば、これまでのインサイトを俯瞰することも可能になるでしょう。
そして分析の最後のステップでは、まとめ上げた今までのインサイトを、PJや戦略など場面に応じて「再編集」します。

ユーザー像を理解するためのペルソナ、行動フローやつまずきを可視化するジャーニーマップなど、定番の可視化方法にインサイトを引用するのも良いでしょう。
戦略や仮説への裏付けとして「このインサイトがあるから、次の四半期はこの戦略で」と、ドキュメントや資料の一部に引用するのも良いでしょう。

いずれにしても、分析の最後のステップは、戦略や施策など、あらゆる企業活動にインサイトを組み込むことが重要です。
どのようなアウトプットだとしても、良いインサイトが引用されていれば、妄想のペルソナや想像の顧客課題よりも、はるかに大きな事業成果と意思決定スピードをもたらします。
Centouでは、さまざまなフォーマットでインサイトの再編集を行うことが可能です。ご興味がある方は、こちらのページからデモをご依頼ください。
ここまで分析のプロセスを具体的にご紹介してきましたが、分析の落とし穴(アンチパターン)もあわせて知っておくべきでしょう。
分析における最も大きな落とし穴は、「分析自体を目的・ゴールにすること」です。
分析と聞くと、何かかっこいい響きを感じられるかもしれません。しかし、分析自体が目的になることはほとんどの場合ありません。分析はリサーチとアクションをつなぐためのものであり、常にアクションがメインになるべきです。
ひとたび、分析を目的にしてしまうと、リサーチとアクションの距離は離れ、事業インパクトの薄いリサーチ活動になり、リサーチ部門のプレゼンスは下がり、社内での意思決定にインサイトが組み込まれづらくなるでしょう。

分析手法や分析プロセスに悩んだときは、落とし穴のサインかもしれません。そんなときは「ゴールはなんだったっけ?」と目的に立ち返ってみましょう。
簡単にここまでの内容をラップアップします。
まず、分析をすべき理由は3つありました。

参照しやすさ ... ユーザーインタビューに参加した人もそうでない人も、振り返りやすくなる
アクションしやすさ ... ユーザーインタビューを行った後「それで?どうする?」とならずに、確実に次の動きにつなげられるようになる
認識の揃えやすさ ... 「私は、あの人はニーズがあると思う」「いや、僕はないと思う」といった、すれ違いを生まずに、共通認識をつくることができる
そして、これらの要素を満たす分析プロセスは以下のようなものでした。

ローデータに起こす ... ありのままの情報を残す
ファクトを抜き出す ... 行動や感情に関する事実を、ローデータの該当部分とセットで抜き出す
インサイトにまとめる ... ファクトを集めてグルーピングし、場面ごとの欲求などに変換していく
用途に合わせて再編集する ... 戦略から施策まで、あらゆる場面で、用途に合わせてインサイトを引用する
これらの分析プロセスがうまく機能すれば、新規事業でもプロダクト開発でも、失敗を避け、大きな成果を出すことができるでしょう。
実際に、新規事業のうち約1/3が「顧客ニーズの特定」ができず立ち上げに失敗しています。

また、プロダクト開発において、1つの「使われない」機能を開発した時の損失は、約500万円にのぼります。

これらを避ける方法は、ユーザーインサイトを捉え、適切にアクションにつなげていくこと(= 良い分析)に他なりません。
すなわち、良い分析ができれば、事業と組織を大きくドライブさせていくことができるのです。
ユーザーインタビューを最大限活用し、プロダクト成長を実現したい方は、ぜひ4ステップの分析プロセスを実践してみてください。
また、事業フェーズや組織の状態にあった分析プロセスやインサイト管理について、Centouではお気軽に相談・壁打ちを受け付けております。こちらのお問い合わせページより、お気軽にご連絡ください。
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Author

Kenji Kato
年間400名以上のユーザーインタビューを実践、5回の事業立ち上げ、顧客インサイトを活用し年間売上9倍の成長などを経て、現在はインサイトマネジメントシステム「Centou」のプロダクト責任者をしています。「あらゆる企業やチームがインサイト駆動で成長できる未来をつくる」をモットーに、さまざまな組織のインサイトマネジメントを支援しています。
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