[EC・リテール業界向け] 顧客理解のズレをなくせば、売上がもっと上がる —— 部門を超えた共通理解の重要性とはじめ方
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ハイライト
- 実は、ブランディングやマーケティングの成果が上がらないのは「チーム内での顧客認識のズレ」によることが多い
- 組織内の認識がズレたまま施策を打っても、穴の空いたバケツに水を注ぐようなもので、売上や認知の向上につながらない。
- 一方、組織の中にいるほど、この「顧客認識のズレ」には気づきづらい
- 顧客認識をそろえることは、戦略を変えるよりもはるかにコスパの良い打ち手であり、売上に悩むなら戦略を変えるよりも優先して取り組むべきトピック
- 具体的には、(アイデアのブレインストーミングに時間を使うよりも)まず顧客認識をそろえることに時間を使う
- また、定性データや定量データなど、顧客認識のもとになる材料を見せるときは「そんなの知っている」とならないように、個人の“脳内の蓄積を上回る資産”として提示するように工夫するのがおすすめ
解説
テーマ : 顧客理解のズレをなくせば、売上がもっと上がる
- 今回のテーマは「顧客理解のズレをなくせば、売上がもっと上がる」
- これまでさまざまな企業でブランディングの支援をしてきたが、ブランディングの役割自体が大きく変わってきている
- ブランディングの定義は世の中にさまざまあるが、次のように捉えている
- マーケティング:お客さまに商品・サービスを選んでもらうために、「行動」を変える手段
- ブランディング:お客さまの行動変容につながるよう、「認識」を変える手段
- ただし近年は、お客さまの認識を変えるために、「チーム内の認識」を変えていくことも、ブランディングの役割に含まれるようになってきた
- チーム内で顧客への認識を揃えることを起点に、ブランディング、マーケティング、売上UPへとつながっていく
- 業界や商材が変わっても、お客さまとチームで向き合うという意味では、やることはほとんど変わらない
バラバラな認識を放置すると、組織が徐々に蝕まれる
- ブランディング支援をする際には、まず「組織内で同じ方向を見ているか?」を確認する
- 「売上を上げたい」「認知を上げたい」といった要望を受けるが、具体を掘り下げると、メンバーごとに顧客認識がバラバラなケースが多い
- 組織内の認識がズレたまま施策を打っても、穴の空いたバケツに水を注ぐようなもので、根本解決にはつながりにくい
- さらに、部門間で議論がかみ合わなくなったり、調整に時間が取られたりと、組織が徐々に蝕まれていく
- しかし、組織内の認識がバラバラであることは、組織の中にいるほど気づきにくい
- そのため、整体師のように組織内のズレを見つけ、整えていくことが重要
- 組織内の認識を揃え、同じ目線で動けるようにすることから、ブランディングは始まる
顧客認識のズレを直すことは、「戦略を変えずに結果が変わる最短ルート」
- 顧客認識のズレを直すことは、「戦略を変えずに結果が変わる最短ルート」
- 事業成果を変えたいとき、戦略を作り直してブランディングに取り組むパターンもある
- これは例えるなら、「途中まで登った山を一度降りて、0から登り直す」ようなもの
- 一方、組織内の顧客認識をそろえれば、同じ戦略でも意思決定と打ち手の精度が上がる
- 顧客認識のズレを直すことは、「今すぐ着手できて、結果につながりやすい」コスパの良い手段と言える
あるある課題1 : ブランドディレクターの属人性
- さまざまな企業を支援する中で見てきた、顧客認識のズレに関する課題を紹介する
- その一つが、ブランドディレクターの属人性
- 特に立ち上げ期(0→1)では、ブランドディレクターのような1人の強烈な想いや顧客理解がブランドの推進力になるため、属人性そのものが悪いわけではない
- ただし、属人性を残したままグロースしようとすると、組織内の認識のズレが生じ、さまざまな不調を引き起こす
- 「センスを言語化するのは野暮」「顧客の気持ちは数字では分からない」といった声もあるが、定性・定量データを丁寧に集め、体系立てて共有していけば、共通認識はつくれる
あるある課題2 : マーケティングとブランディングの対立
- マーケティングとブランディングは本来、「認識を変えて、行動を変える」という関係で、連動している必要がある
- しかし現場では、「ブランドらしくない」「それでは売れない」といった対立が起きがち
- また、組織内に複数のペルソナが混在しているケースがある
- 具体的には、憧れ像のペルソナと、実買層のペルソナを同時に設定している状態
- この2つは前提が違うため、言葉だけが一人歩きすると、組織内で混乱が生まれる
- 顧客認識を細分化すること自体は良いが、途中から対立構造を引き起こす場合がある
- これらの根本原因も、組織内で顧客認識のズレが生じていることにある
補足 : 共通認識づくりには、外部の支援や、議論が人vs人にならない仕組みを置くことも有効
- 顧客の定性・定量データは、見せ方やタイミングを誤ると「そんなことは知っている」と、軽く見られる(データの敗北)ことがある
- 個人の“脳内の蓄積を上回る資産”として提示できれば、「自分の頭だけでは足りないかも」という体験が生まれ、個人の属人性 → 組織の再現性への転換点になりうる
- ただし、「現場メンバーvsディレクター」のような対立構図になると、人間関係の軋轢が生まれやすい
- そのため、外部支援によるファシリテーションを入れたり、議論が人vs人にならない仕組みを用意することで、共通認識づくりが進みやすくなる場合がある
Team Market Fit —— ブランドは“内”が揃うことで、“外”が良くなる
- Product Market Fitは重要だが、その前に“Team Market Fit”を実現する必要がある
- 誰か1人だけの顧客認識が優れた状態ではなく、チーム全員が同等以上の顧客認識を共有できている状態を目指す
- それがなければ、たとえ一時的にPMFできても再現性が弱く、組織の不調を招くズレが生まれて、徐々に組織が蝕まれていく
- Team Market Fitの実現には、粘り強く取り組む必要がある
事例1-1 : 某ブランドでの支援事例
- ケーススタディとして、実際に支援してきた企業の例を紹介する
- 立ち上げから約2年間、商品の評判は悪くないが売上が伸びず、目標未達の状態だった
- 問題は、想定顧客と実売層(ブランドに愛着を持ち、実際に購入する人)のズレにあった
- そこでまず、顧客アンケートの定点観測を粘り強く継続した
- 次に、顧客に関する定性・定量データをチームで読み合わせることを徹底した
- その読み合わせを踏まえて、ペルソナを月次でアップデートし続けた
- さらに、本社スタッフも売り場で接客するなど、一次情報の獲得を重視した
- 現場で得た気づきを持ち帰り、全員で読み合わせを繰り返すことで、深い顧客理解とチームの目線合わせを同時に進めた
事例1-2 : ブレストよりも認識合わせに時間を使う
- 多くの組織はブレストでのアイデア出しに時間を使いがちだが、ブレストよりも「認識合わせ」に時間を割くようにした
- 具体的には、スタッフそれぞれが過去の調査や現場での経験から得たインサイトを持ち寄り、整理・統合する作業に時間をかけた
- 顧客理解のスタートライン(共通認識)をそろえることで属人性が薄れ、チームの一体感も増し、どのチームでも筋の良いアイデアが出やすくなる
事例1-3 : 部門を超えた共通認識によって売上が増加
- 成果として、「CVRが年間平均約3%」「リピート率が昨対4倍」「インフルエンサーマーケティングの売上効果が昨対10倍」などを実現した
- 集客・セールス・CRMなど部門間の認識がそろったことで、顧客の「気持ちの高まり」を途切れさせない施策を一気通貫で展開できた
- 施策例:インフルエンサーの起用方針を見直したことで、売上効果が昨対10倍に
- 以前は実売層への認識がバラバラで、トレンド性を優先した起用方針になりがちだった(有名なインフルエンサーを起用したのに、売上が伸びない...というケースも発生)
- そこで、PRチームに対して実売層のインプットと認識合わせを徹底した
- そのうえで、「実売層が憧れるのは誰か?」を基準にインフルエンサーを起用した結果、売上効果の増加につながった
事例2 : クラシコム
- 「北欧、暮らしの道具店」を運営する株式会社クラシコム
- 19期連続で増収増益を続ける同社では、組織内の「共通認識の強さ」が際立っている
- “KURASHICOM BOOK“に代表されるように、クラシコムらしさや顧客との向き合い方を、さまざまな手段で組織に根付かせている
- その結果、個人の属人性に依存せず、再現性をもってより良い企画を追求できる
- さらに共通認識がそろっているからこそ、あえて感性を活かしたプロセス(例:担当者がエッセイを持ち寄って商品を企画する)でも、結果につながる状態がつくれている
事例3 : SENN
- スキン&マインドケアブランド「SENN」では、共通認識の輪を社内だけでなく社外(インフルエンサー)にも広げたことで、売上向上につながった
- SENNはWEB中心のブランドであり、マーケティングにはインフルエンサーの協力が重要
- インフルエンサーに「SENNとは何か」を丁寧に伝えるとともに、彼らと一緒に情報発信する仕組み(ポッドキャスト)を立ち上げた
- 共通認識が揃っているため、各インフルエンサーが自由に語っても発信の軸がブレず、届けたい顧客に届くマーケティング施策になった
- この施策を約1年半継続した結果、売上2.5倍を実現した
- 共通認識の輪を広げることは一朝一夕にはできないが、粘り強く続けることで、着実に成果へと結びついていく
図解で見る、組織内の共通認識づくりのプロセス
- 図解1 : 共通認識の構築からはじめる、ブランディングのプロセス
- よくある失敗はグレーのプロセスだけで、顧客の声を半ば鵜呑みにして施策化し、そのままPDCAを回してしまうこと
- 共通認識がない状態では、データの解釈や施策もバラバラになりやすく、属人化や部門間の分断が生まれ、成果が頭打ちになる
- 一方で、組織内の共通認識を徹底してそろえる(青のプロセス)ことで、一定以上の成果が生まれやすくなる
- 図解2 : 共通認識をつくるとは何か
- 共通認識をつくるとは、Value・Out-Side・In-Sideという3つの山を別々に極めるのではなく、1つの大きな山として統合していく発想
- 「共通認識だけで売上は上がらない」と思われがちだが、やり切れば売上につながる
- 泥臭く時間をかけて積み上げることが、最終的に“大きな山をつくる鍵”となる
登壇者について
吉岡 芳明 (株式会社Bricolage&Lo代表取締役 / ブランディングディレクター)
サイバーエージェント・グループにて新規事業を担当。株式会社TO NINEの共同代表取締役としてスキン&マインドケア「SENN」を立ち上げ、ブランドディレクターとして活動。2025年に株式会社Bricolage&Loを設立。コスメ、ファッション、ジュエリー、フード、ペット、銀行など多様な業界のブランディング支援を手がけてきました。また、複数の自ブランドの立ち上げ経験を持ち、ブランディングディレクターとして幅広く活躍。





