マイナビに聞く、ユーザー起点で伸びる組織と文化のつくり方
- 過去イベント資料

ハイライト
- 「マイナビ20XX」など、キャリアに関わるサービスを数多く展開するマイナビでは、ユーザーリサーチはもちろん、その先の定性データの管理に力を入れている
- 開発したサービスが使われなかった経験から、正確な顧客の業務理解・課題理解の必要性を痛感
- さらに、異動や退職によってナレッジが失われる「人がデータベース状態」を解消するため、定性データを蓄積・共有できる仕組みを導入した
- 年間180件のユーザーインタビューを実施し、部内で体系的に蓄積することで、認識のズレなく意思決定できる状態へ
- その結果、顧客課題を正しく捉え、価値となるサービスや機能を企画化できるチームへと進化し、「事業が伸びる顧客理解の体制」を確立した
- いくつかの施策とその徹底によって、「組織浸透」と「事業成果に直結するプロセスづくり」を実現
くわしい解説
1. テーマ : ユーザー起点で伸びる組織と文化のつくり方
- 2023年に創業50周年を超えたマイナビでは、新卒・中途・アルバイトなどの人材紹介に加え、様々な領域で事業を展開している
- その中で「就職情報サイト マイナビ」をはじめとした新卒採用支援領域において、主に採用を実施する企業向けのプロダクトを担当している
- 今回のテーマであるユーザーリサーチには、自部署としてここ1〜2年で注力し始めた
- それまでも定量調査は行っていたが、ユーザーインタビューなどのN1リサーチは、意欲の高い社員だけが独自に実施している状態だった
- ユーザーの定性データを事業に活かす文化に向けて、試行錯誤してきた事例を紹介する
2. 企画起案・業務引継ぎ・育成など、組織面でのさまざまな課題があった
- 情報の蓄積: 顧客へのヒアリングログなどの定性データを個々人が独自に管理しており(=人がデータベース状態)、異動・退職が起きるとナレッジが失われてしまう
- プロジェクト費用の獲得: 顧客解像度が低いまま事業計画を提出すると、経営層が投資判断に踏み切れない
- 新規社員の成長: 顧客に関する定性データが十分に蓄積されていないため、顧客理解のハードルが高く、新規メンバーが早期に活躍することが難しい
3. 使われない機能開発や、「必要そうな機能を全部」の判断になりがちな状態を脱したい
- 機能と顧客ニーズのズレ: 定量調査の傾向をもとに機能設計していたため、根本的な顧客ニーズを捉えきれず、結果として使われない機能になることもあった
- 過剰な機能搭載: 顧客ニーズの解像度が低いまま「必要そうな機能を全部つくる」判断になりがちで、開発スケジュールの逼迫・コストの肥大化・人員の疲弊につながっていた
4. 深いユーザー理解 + 人によらないインサイト管理を導入
- 「プロダクトアイデア検討」「UXデザイン」「検証・改善」という3つのフェーズでユーザーリサーチを強化し、企画・開発プロセスをアップデート
- 年間約180件のユーザーインタビューを実施し、Centouで定性データを管理している
- 経験の浅いメンバーには「①顧客ニーズの拾い上げ」「②利用満足度の確認」を目的に、経験値の高いメンバーには「③顧客体験の可視化」を目的に、リサーチを実施してもらっていた
5. ハードルを下げながら、成果を確実に出すための組織施策を実施
- テンプレート作成 : メンバー全員がN1リサーチを実践できるよう、各種テンプレート(例:ヒアリングログ、調査結果まとめ)を整備した
- 社内の協力体制強化 : 営業部門への協力依頼の呼びかけを行い、顧客へのヒアリング機会を設けてもらうなどの協力を得やすい環境を準備した
- 集めたデータを個人にとどめず集約 : 各自が実施したユーザーインタビューの結果は、これまでバラバラだったが、Centouで管理することをルール化。メンバー全員が定性データにアクセスできる状態にした
- 情報の平準化 : 結果共有と意見交換を目的とした定例会議を開催。定例化することで、「リサーチは当たり前にやるもの」という空気感が醸成された
6. 浸透は初めからガチガチにしない
- 収集した定性データをもとに、企画化につなげるための取り組みをいくつか行なっている
- 具体的には、「情報共有会」「顧客発見」「ブラッシュアップMTG」「学び共有会」「データ分析」「1on1 MTG」の6つの機会を運用している
- これらの取り組みは、初めからすべて行っていたわけではなく、最初は1つだけだった
- 一度やってみてから、効果が出そうなら定例にして...という流れで組織浸透を図った
7. 組織面でも、事業面でもポジティブな変化が起こる
- 情報の蓄積( ⭕️ ): Centouで情報を体系的に管理することで、人が入れ替わっても顧客ニーズが蓄積され続ける状態を実現できた
- プロジェクト費用の獲得( ⭕️〜🔺 ): 企画案は通りやすくなった。ただしリサーチ単体の効果だけでなく、プロダクト戦略やUXデザインの精度が上がったことも要因としてある
- 新規社員の成長( ⭕️ ): 若手メンバーでも、顧客の声をもとに小さな機能改修を実施できる状態になった
- 機能と顧客ニーズのズレ( ⭕️〜🔺 ): 部分的な機能改修ではズレが大きく減った。一方で、新規プロダクト開発では満足できるレベルに達するまで課題が残っている
- 過剰な機能搭載( ⭕️ ): 初期フェーズでは必要ない機能をバシバシ省くことができるようになった
8. 「顧客の事実」で会話すれば、認識のズレは起こらない
- 企画案が通りやすくなった要因の一つは、顧客の発話や行動といった「事実」を起点に、具体的な意見交換ができるようになったことにある
- 以前は「私は顧客ニーズは〇〇だと思う」といった主観的な主張になりやすく、認識のズレによって議論が噛み合わないことが多かった
- しかし今は、顧客の発話や行動という事実を示したうえで議論できるため、認識のブレが起きにくくなり、結果として企画案が通りやすくなった
9. 共通理解がつくれることで、投資も引き出しやすく
- ユーザーリサーチを強化することで、取り組む顧客課題など、顧客認識のフェーズが以下のように変わっていった
- フェーズ1 — 自身の主観のみ: 認識のズレが起きやすく、企画が通りづらい
- フェーズ2 — 定量調査: 傾向値が分かるため大枠の方向性はそろうが、議論が具体に入るほど認識のズレが生まれやすい
- フェーズ3 — 定性調査+定量調査: 傾向値に加えて、顧客の発言・行動などの事実情報がそろうことで、認識のズレが起きにくくなり、より良い意思決定がしやすくなる
- また、具体的な顧客の声があることで、仕様を詰める段階でも「必須の機能」「あれば良いが必須ではない機能」などの取捨選択がしやすくなった
10. なぜ文化レベルで、ユーザー理解が当たり前になったか?
- キーパーソンを掴む : 事前にプロダクト企画部門や営業部門の責任者と会話し、業務においてリサーチが重要であることを共通認識にしておく
- リサーチ自体を目的にしない : プロダクト品質向上を目的として、その手段としてリサーチを行う。この考え方から、自部署にはリサーチチームや専属担当者を置いていない
- 部門を横断して共有する : 自部署に限らずプロダクト企画・運営を担当する部門に向けて、ノウハウ共有の勉強会を開催する
- 自分たちの手を動かす : 顧客課題が自分ごとになり、企画の改善につなげやすくなる
- 一定の強制力を持たせる : 企画立案フォーマットに「定量根拠・定性根拠」の項目を設け、入力していなければ企画が通らないルールにしている
11. Q&A : リサーチの必要性を示すためには?
- 一番簡単なのは、リサーチをせずに失敗し、必要性を実感すること
- リサーチ単体の価値は数字で測りづらいため、観点を変えて必要性を問う(例 : 同業他社のリサーチ状況と自社との差分を伝える)
- そもそも上層部がマーケットインの重要性を認識しているか、まず確認する
- 初期は最小限のコストで始めて成果をつくり、「有用な取り組みだ」と理解してもらう
- たとえば企画立案では、N1のインサイトを明確に捉えたA案と、定量情報だけで導いたB案を見せ、具体度や筋の良さの違いを体感してもらう
12. Q&A : リサーチに対するメンバーの意識を高めるためには?
- トップダウンの指示(一定の強制力)は必要だが、メンバーにポジティブなモチベーションがないと活動は長続きしない
- まずは実際にインタビューしてみて「こんなに困っているんだ……」と実感してもらう
- リサーチを楽しめる環境づくりも大切(例:リサーチ結果を共有(自慢)できたり、認めてもらえる場をつくる)
- そのうえで、「リサーチしていないと企画を通せない」など、仕組みで強制力を持たせる
- リーダーや役職者が率先してリサーチに行くことも、有効な後押しになる
13. Q&A : 様々なツールに散らばる情報をどう集約する?
- マイナビでは、継続しやすく、人が変わっても回せる運用かどうかを意識していた
- 最初から無理にワークフローを変えようとしても、続かないことが多い
- 当初は「一つのツールに情報を集約すること」には強くこだわらずに、継続した取り組みになるように、じっくり自然に変化させていく
- 今後の展望としては、一部門だけでなく、グループ全体にインサイトマネジメントの取組みを広げていきたい
- また、同じ顧客ターゲットであれば、そのニーズをCentou上で横断的に管理できる状態にできると理想だと考えている
14. Q&A : どのN1に話を聴くべきか、どう判断している?
- まずは案件ごとにターゲット層を定義し、そのターゲットに合うN1を探す
- ただし、最初からターゲットど真ん中のN1と出会えることは少ない
- 10〜15人ほど話を聞くと、ターゲットの中心に近いN1かどうか判別できるようになる
- その段階に進んでから、さらに詳細なリサーチを通じてN1への解像度を高める
登壇者について
大塚 亮 (キャリアデザイン事業企画室 企画推進統括部 統括部長)
2011年に(株)マイナビに入社。新卒採用領域の営業職として300社以上の顧客を担当した後、プロダクト企画部門に異動。現在は就職情報サイト"マイナビ20XX"を始め、複数プロダクトのマネジメントを担当。プロダクト戦略策定からリリース、推進まで幅広い工程に関わる。2024年度はプロジェクトリーダーとして、マイナビグループ9,000名の中で最も優れた団体に贈られる社長賞を受賞。「デスクだけ考えたアイデアは大体外れる」をモットーに、社内全体へのリサーチ文化の浸透を目指している。
松原 優依 (キャリアデザイン事業企画室 企画推進統括部 企画推進2部1課 課長)
2015年に(株)マイナビに新卒入社。営業職として顧客の新卒採用領域の課題解決に取り組んだ後、現在のプロダクト企画部門に異動。就職情報サイト"マイナビ20XX"や応募管理システム“MIWS”などのプロダクトにおける調査や企画立案、プロトタイプ検証などUXデザインの業務を担当している。現在は、顧客起点の企画立案を実現するために、ユーザーインタビューの浸透を目指し、部門内で年に150件以上のインタビューを実施。顧客インサイトを活用した企画立案の仕組み化を推進している。





