centou

『インサイトマネジメント』出版記念イベント「顧客インサイトを起点に事業を伸ばす方法」

5min
  • 過去イベント資料
『インサイトマネジメント』出版記念イベント「顧客インサイトを起点に事業を伸ばす方法」

ハイライト

  1. 「ユーザーインタビューをしたけれど、成果につながらない」。その背景には、ユーザー理解から事業成長までのプロセスが見えていないことがある
  2. 事業成長までのプロセスは「顧客接点 → インサイト → 共通認識 → 意思決定 → 実行」の5つ。分析は、その一部にすぎない
  3. インサイトは、複数のファクト(証拠)から導く推理と捉えると分かりやすい
  4. 議事録やAI要約を残すだけでは、チームで活用しづらい。組織を動かすには、インサイトとして整理することが必要である
  5. インサイトを見つけて終わらず、共通認識をつくることが重要。必要な情報を自分で取り出せる状態が、チームの意思決定と実行を速くする
  6. インタビューを始める前に、すでにあるインサイトを探してみる。商談や過去の問い合わせから、必要な情報が得られることもある

登壇資料

くわしい解説

1. 自己紹介と今回のテーマ

  • 「ユーザーインタビューをしたけれど、うまくいっている感じがない」。今回取り上げるのは、こうしたモヤモヤである
  • その背景には、ユーザー理解と事業成長の間に、どのようなプロセスがあるのかが見えていないことがある
  • 今回の内容は、5つの事業の立ち上げ・グロースや、累計1,000名以上へのユーザーインタビューを通じた経験に基づく
  • 顧客インサイトを起点に売上を年間9倍に伸ばした経験は、書籍『インサイトマネジメント — 顧客理解を「組織の武器」に変える技術』(講談社)にもまとめている
  • ユーザー理解から事業成長までの全体像を押さえたうえで、インサイトの見つけ方、見つけて終わりにしないための考え方、これからインタビューを始める際のポイントを紹介する

2. ユーザー理解と事業成長の間にある「深い溝」

  • ユーザーの声を聞けば事 業が伸びる、というほど単純ではない
  • 多くの企業では、インタビュー後に「正解の分析手法」を探し、手法を実践すること自体がゴールになってしまう
  • ホワイトボードツールに付箋を並べ、ペルソナやジャーニーマップをつくり、ワークショップで認識を揃える。しかし、数か月後には再び認識がずれ、「本当にやった意味があるのか」と問われる
  • こうした状況の中で、リサーチ組織やUX組織が解体されてきた。残るのは「インタビューをしよう」というスローガンと、共有フォルダに置かれた議事録やAI要約だけである
  • 問い直したいのは、ユーザー理解と事業成長の間に必要なのは、本当に「分析」だけなのかということ
  • 分析は、事業成長までのプロセスの一部にすぎない。全体像が見えていなければ、分析の質を上げるだけでは成果につながらない

3. インサイト起点で事業が伸びる5つのステップ

  • インサイトを起点に事業が伸びるまでのプロセスは、「①顧客接点 → ②インサイト → ③共通認識 → ④意思決定 → ⑤実行」の5つで捉えられる
  • 全体像を知らないと、インタビューと分析に力を使い切り、②インサイトで止まってしまいやすい
  • ①②は「個人が理解し、動くまでに必要なこと」、③〜⑤は「組織が動くまでに必要なこと」と整理できる
  • そのため、③〜⑤までを見据えたうえで、顧客接点を持ち、インサイトを得ることが大切である
  • 今回は特に、「どのようにインサイトを得るか」「得て終わりにしないために何が必要か」を扱う

4. インサイトは「証拠から推理を導く」と考える

  • 「インサイト」は定義が難しい言葉だが、「名探偵コナン」のように証拠から推理を導くものと考えると分かりやすい
  • コナンは複数の証拠を集め、「犯人は誰か」「動機は何か」という推理にたどり着く
  • この「証拠 → 推理」の関係が、「ファクト → インサイト」に置き換えられる
  • ファクトが根拠であり、インサイトがそこから導く結論。まずは、この2つの関係を押さえておきたい

5. インサイトは「証拠から推理を導く」と考える

  • インタビューだけが仕事ではない中で、「議事録を残すだけではダメなのか」「AIで要約すれば十分ではないか」と感じるのは自然なこと
  • 個人が理解するだけなら、議事録すら必要ない場合もある。しかし、③共通認識以降の「組織を動かすステップ」を考えると、インサイトとして整理しておくことが必要になる
  • 例えば、入社したばかりで顧客像も分からないときに、過去のインタビュー議事録を大量に渡されたらどう感じるだろうか
  • 情報を残すだけで、ほかのメンバーも理解し、活用できるようになるのか。この場面を想像すると、議事録だけでは足りない理由が見えてくる

6. 具体例①:オンライン会議とInstagramのストーリーズ

  • オンライン会議では、「日々複数の会議がある」「会議が連続することが多い」「面識のない人ともよく話す」といったファクトがある
  • そこから導かれるのは、「すぐに会議を開始し、スムーズに切り替えたい」というインサイト
  • Zoomの「URLをワンクリックするだけで、登録せずに参加できる」仕様は、こうした背景から生まれたとされる
  • Instagramのストーリーズも、インサイトを起点にした機能の例である
  • 「美しく整った写真を投稿しなければ、というプレッシャーがある」「プロフィールにSnapchatのQRコードを貼っている人が多い」というファクトから、「うまく撮れていなくても、その場の気分をラフに共有したい」というインサイトが見えてきた
  • そこで用意されたのが、「投稿が24時間で自動的に消える」という、気軽に投稿するための“言い訳”である
  • 社内の強い反対を押し切ってリリースされ、毎日5億人以上が使う主要機能へと成長した

7. 具体例②:Zoomのブレイクアウトルーム

  • インサイトは、BtoCプロダクトだけに役立つものではない。BtoBの例が、Zoomのブレイクアウトルーム機能である
  • Zoomのチームが学校を訪問して得たのは、「オンライン授業では人数が多いと様子見になる」「自分の発言で場の進行を止めてしまいそうで怖い」というファクト
  • 一方で、「興味のあるグループに自ら参加すると、積極的に発言するようになった」というファクトもあった
  • ここから、「自ら参加先を選ぶことで、グループ学習の主体性が高まる」というインサイトが導かれた
  • それが、参加者自身で部屋を選べるブレイクアウトルーム機能につながり、Zoomが教育・研究分野で利用を広げる要因の1つになった

8. インサイトを見つけて終わりにしない

  • インサイトを見つけても、それがチームに正しく伝わるとは限らない
  • 社内で共有する際には、「顧客 → 自分」と「自分 → チーム」の間で、2度の認識のずれが起こりうる
  • だからこそ重要なのが、3つ目のステップである「共通認識」以降である
  • 必要なのは、調査・分析ではなく、共通認識かもしれない。これが今回の大きなテーマである
  • 共通認識ができると、その後の意思決定と実行が速くなる。インサイトを見つけるだけでなく、チームで扱える状態にすることが必要である

9. 役割が違うと必要なインサイトも違う

  • プロダクト開発では、エンジニアから「削除時に非同期処理を挟みたいが、どうか」と相談され、プロダクトマネージャーが内容を十分に理解できないまま「良さそうですね」と答えてしまう場面がある
  • 相談のたびにミーティングが増えると、集中できる時間は減り、「この人に相談しないと仕事が進まない」という状態になる。メンバーも自分で判断しづらくなる
  • 背景にあるのは、役割によって必要なインサイトが異なること
  • 施策の方向性を決める人には「その場面での顧客課題」、UIや要件を具体化する人には「顧客の業務の流れ」、実装する人には「顧客の利用状況」が必要になる
  • マーケティングでも、企画・クリエイティブ・入稿といった役割ごとに、必要な情報は異なる
  • その都度、誰かが説明する形では時間がかかり、説明のうまさによってチームの動きが左右されてしまう
  • 知りたいときに、必要な情報を「自分で取り出せる」状態にする。そのために、インサイトマネジメントが必要になる

10. 事例:カミナシにおける共通認識をつくる仕組み

  • 株式会社カミナシでは、プロダクト開発を「検証する仮説の決定 → 現場訪問 → インサイトの構造化 → 施策の決定・具体化 → 開発 → フィードバックの回収」という流れで進めている
  • 現場訪問の後にインサイトを構造化し、共通認識をつくる工程が組み込まれているのが特徴である
  • カミナシのメンバーは、「インサイトを管理していないときと比べると、アドバンテージをもってスタートダッシュを決められているような感覚です。新しい打ち手を打つ時の初速が大きく違います」と語っている
  • 1,500以上のインサイトが蓄積され、「予備品管理」「設備カルテ」などの事業領域ごとに俯瞰できる状態にある
  • これにより、どのテーマをよく理解できていて、どこに不確実な部分があるのかが見えるようになる
  • 共通認識をつくるうえで大切なのは、「俯瞰できること」と「たどりやすいこと」
  • この2つが揃うと、どの課題に取り組み、どの課題には取り組まないのかを決めやすくなる。分析の質だけでなく、意思決定につながる共通認識ができているかが重要である

11. インタビューを始める前にすでにあるインサイトを探す

  • これからユーザーインタビューに取り組むなら、まずは5つのステップの全体像を知ること。そのうえで、いきなり「話を聞こう」と見切り発車しないことが大切である
  • すでに事業やプロダクトがあるなら、「この施策に関連しそうなインサイトはあったか」と、活用する場面から逆算して探してみる
  • ただし、施策に都合よくインサイトをこじつけてはいけない。こじつけが必要になるのは、蓄積が足りていない合図でもある
  • 新たにインタビューをしなくても、商談や過去の問い合わせからファクトとインサイトを整理することで、事足りる場合も多い
  • 逆算するためには、「こういうインサイトがあれば、こういう解決策につながる」という引き出しを増やしておくことが役立つ
  • 押さえたいのは、「5つのステップで考える」「②インサイトで終えない」「手法そのものを目的にしない」の3点である

12. Q&A: インサイトが見えてくるまでに、ファクトはどれくらい必要?

  • インサイトかどうかを0か1で判断するのではなく、「どれくらい確からしいか」という度合いで捉えるとよい
  • 見るべきなのは件数だけでなく、ファクトがインサイトの根拠としてつながっているかどうか
  • 推理と同じように、ファクトが増えるほど、そこから導ける結論の幅も広がる
  • 1つか2つのファクトから言えることは、そのファクトを少し抽象化した内容にとどまりやすい
  • 「では、何をするか」が見えてこない場合は、ファクトが足りない合図と考えられる

13. Q&A: ニーズは分かったが、そのユーザーをどう集める?

  • そのニーズを持つ人が、「どのような行動をしているか」に注目するとよい
  • ニーズ自体は見えなくても、使っているツール、発言、参加しているイベントなどの行動に表れる
  • インサイトをファクトとセットで蓄積しておけば、根拠となった情報をたどり、「どのような行動をしている人なのか」を確認しやすくなる

14. Q&A: ファクトからインサイトを導く「頭の使い方」は?

  • 事業計画を考えるときとは、逆の方向で考えると分かりやすい
  • 事業計画やKPI・KGIを考える際は、「数年後の目標から、来年の施策へ」というように、抽象から具体へと落とし込んでいく
  • 一方、インサイトは、具体的なファクトから抽象的な結論へと積み上げていく
  • 先に結論を置いて考えすぎると、ファクトをこじつけてしまいやすい
  • まずは具体的なファクトから出発し、「このファクトを根拠に、どこまで大きな結論が言えるか」を考えることがポイントになる

15. Q&A: 始めたての人は何を大事にすると良い?

  • 日常的にできる練習は、会話の中でファクトとインサイトを分けて考えること
  • 家族や同僚との会話で、「この人は本当は何を伝えたいのか」を考え、確かめ、違っていたら修正する
  • 例えば、「なぜ靴下を脱ぎっぱなしにしているのか」と言われたとき、靴下のことだけを考えるのは、顧客の要望をそのまま実装することに似ている
  • 背景には、「部屋をきれいにする父として振る舞ってほしい」といった動機があるかもしれない
  • こうした考え方が身につくと、大企業の顧客から要望を受けたときにも、「本当にしたいことは何か」を議論できるようになる

16. Q&A: 最初はインサイトを外してしまうもの?

  • 基本的には、外すものと考えてよい
  • インサイトマネジメントは、蓄積によって再現性を高めていく考え方である
  • 人は、自分が欲しいものも、他人が欲しいものも、分かっているとは限らない
  • 外すことを前提にしておくほうが、顧客に対して謙虚な姿勢を保ちやすい

17. Q&A: 実行を若手に任せるとうまく進まないのはなぜ?

  • ③共通認識・④意思決定までをマネジメント層が担い、⑤実行を若手に任せると、消化不良になってしまうことがある
  • あえてマネジメント側に原因を求めるなら、共通認識が十分にできていない可能性が高い
  • 「語る」「全社総会で説明する」だけでは、共通認識としては弱い
  • 必要なのは、知りたいときに自分で探し、根拠までたどれる状態である
  • 全体像の中で、いまどこに取り組んでいるのか。どの顧客が、その課題を語っていたのか。そうした情報をたどれる状態にしておくことが、マネジメント側の役割になる

18. さいごに

  • インサイトの話は、どうしても「見つけること」に目が向きやすい
  • しかし、本当に大切なのは、そこからチームが動けるようになること。意思決定や実行につながらなければ、見つけたインサイトも活かされない
  • ユーザー理解は個人プレーではなく、チームプレーである
  • 調査・分析で終わらず、共通認識をつくることまでを考える。顧客理解のあり方は、いま大きく変わりつつある

登壇者について

加藤 けんじ (Centou 創業者 / プロダクトマネージャー)
日本におけるインサイトマネジメントの第一人者として、インサイトマネジメントの事例発信や普及を行う。また国内では初となるインサイトマネジメントクラウド「Centou」のプロダクト責任者を務めている。7度の新規事業立ち上げや数千人以上への顧客インタビューなどを通じて、「チームでインサイトを扱う重要性」についての原体験を経て、インサイトマネジメントの考え方に共感。顧客に喜ばれる仕事が当たり前に、より自然になるように、さまざまな企業でのインサイトマネジメントのアドバイザーとしても幅広く活動中。 (X : @kenjikatooo)

これを読んだあなたへのおすすめ

コピーしました
X

あなたのチームも、
インサイトマネジメントを
はじめませんか?

インサイトマネジメントは、ユーザー理解から事業を伸ばしたいあなたの味方です。
「顧客の声は聞いているのに成果が出ない」「チームの認識がズレる、スピードが遅い」
そんなお悩みから解放され、顧客に向き合うほど事業が伸びるしくみを実現しましょう。

他のイベントレポート